令和6年6月25日(水)、宮城県石巻市長面尾ノ崎海岸において、地中レーダ等を用いた東日本大震災の行方不明者捜索実験を実施しました。

 本実験は、本校 総合工学科の園田潤教授が実施中の文部科学省 科学研究費補助金(基盤研究B)「災害捜索やインフラ点検を刷新する人手不要な3DイメージングAI地中レーダの創出」(課題番号:23H01650)の一環として行われたものです。本研究では、地中レーダとAI・ロボット技術を活用し、災害時における行方不明者の捜索を自動化・無人化する技術の確立を目指しています。

 今回の実験では、現地データおよびAI学習用データの収集に加え、実際の捜索活動への協力も目的としています。本実験は月1回程度の頻度で継続的に実施しており、今回はボランティア3名、園田研究室の5年生4名に加え、東日本大震災当時小学4年生で現在も行方不明となっている鈴木巴那さんを現在も探されている母・鈴木実穂さんにもご参加いただきました。

 当日の捜索では手がかりは得られませんでしたが、参加されたボランティアの方からは、学生にも今後の捜索用ロボットの開発に対する期待や要望が寄せられました。また、終了後には旧大川小学校を訪問し、鈴木実穂さんから「震災3日後にようやく大川小に入ることができたが、今も探し続けている」ことなど震災当日の状況やこれまでの捜索活動についてお話を伺いました。それを受け、今回初めて参加した学生からは「日頃学んでいる技術をこうした災害現場での捜索に活かしたい」といった声が寄せられました。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災では、現在も2520人が行方不明となっており(2025年3月1日・警察庁発表)、警察やご家族等による捜索活動が継続されています。さらに、2024年1月1日に発生した能登半島地震のように、大規模な自然災害の発生は近年増加傾向にあり、発災直後の迅速な救助・捜索活動の重要性が一層高まっています。本研究では、このような災害時に役立つ技術の確立を目指し、今後も継続的に研究を進めてまいります。

 最後に、震災当時について貴重なお話をお聞かせくださった鈴木実穂さんに心より感謝申し上げます。なお、当日の様子はミヤギテレビの取材を受けており、後日放送される予定です。

 科学研究費補助金・基盤研究(B)の概要
 https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23K26344/

 鈴木巴那さんに関する報道例
 https://mainichi.jp/maisho/articles/20220627/kei/00s/00s/019000c
 https://www.asahi.com/articles/ASS1N7J6NS1NUNHB005.html

 園田教授の東日本大震災の行方不明者捜索に関する報道例
 https://www.nikkei.com/topics/22A13890
 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/tbc/386549?display=1

鈴木実穂さんから捜索場所の説明を受ける学生の様子
地中レーダで検出した地中物体の位置を掘削する学生の様子
津波によって破壊された道路の跡が未だ残る捜索現場の様子
裏山から見た旧大川小学校