令和元年7月、総合工学科 森真奈美助教が平成30年度公益財団法人本多記念会の原田研究奨励賞を受賞しました。この賞は、東北地区の大学、研究機関及び高等専門学校に在職する35歳以下の研究者で金属及びその周辺材料に関する研究・教育を行い、優れた成果・教育的貢献が顕著な将来性豊かな者を表彰するもので、研究テーマ「格子欠陥制御に基づく生体用Co-Cr-Mo合金の高強度化と塑性変形挙動に関する研究」で受賞しました。
 森助教は、代表的な生体用金属材料の一つである生体用Co-Cr-Mo合金の塑性加工に基づく組織・特性制御について研究を行い、独自に設計した熱間加工プロセスにより、既存材の2倍以上となる高強度と大きな引張延性を得ることができました。また、放射光X線回折を用いた格子欠陥の定量評価により高強度化のメカニズムについて調査し、本合金の熱力学的安定性を反映した熱間加工中の特異な積層欠陥の形成と、それに起因した著しい強化を見出しました。本手法により得られた合金は優れた疲労特性を有しており、金属インプラントの課題である耐久性の改善において重要な研究成果を得ることができました。さらに、熱間加工組織内に導入された格子欠陥が生体擬似環境における不動態化や当該合金の力学特性や耐摩耗性を支配する加工誘起マルテンサイト変態を促進することを明らかにしました。
 本研究において得られた成果は、民間企業との共同研究により実機プロセスへ応用されており、日本初の人工股関節素材や脊椎固定インプラントの実用化に貢献しています。

森真奈美助教 本熱間加工プロセスで作製した生体用Co-Cr-Mo合金の機械的特性(既存材の2倍以上となる高強度と大きな引張延性を得ることができた)